森絵都『カラフル』
- 作者: 森絵都
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
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気がつけば文庫落ちしていたので購入.軽快かつポップな文体であっというまに読み終わった.面白かった.
森絵都って今時のふつーっぽい子供を書くのがうまいよなぁ.適度に力が抜けてて,ガキだけどシャカイとかゲンジツってやつがわかってて,冷めてる感じが.
「きれいな服とか,指輪とかって,そんなにほしいもんか?」
「うん,ほしい.っていうか,ひろかほかにほしいものとかもないし」
「あんなおやじと寝てまでほしいもんか?」
「ほしいよ」
「大人になるまで待てないの?もっとまっとうに金かせげるようになるまでさ」
「待てないよ,ひろか」
待てるわけないじゃん,とひろかははじめて声をとがらせた.
「じゃあ真くんはさ,その高そうなスニーカー,大人になるまで待てる?」
ぼくはぎくっと足元をみおろした.派手な黄緑のラインが入った青いスニーカー.超人気メーカー名が光っている.
「三十とか,四十とかになってもそういうの,履きたいと思う?」
「う……」
ううん,ぜんぜん.
「ひろかもいっしょだよ.きれいな服も,バッグも指輪も,ひろかは今ほしいの.大人になってからほしいなんて思ったことないの.どうせひろかの体なんておばさんになったらもう価値なくなっちゃっうんだし,価値なくなってからきれいなもの買ってもしょうがないもん.エプロンやババシャツの似合う年齢になったら,ひろかはおとなしく,エプロンやババシャツを着るよ」
わかってるもんなぁ,自分の価値とか.ルール守ったからって幸せになれるわけでもないし,迷惑かけてるわけでもないし.うーん,聡い.即物的,刹那的,そしてこのビッチがっ!とは思うものの,それは間違ってる!止めなさい!とは言えないなぁ俺.物語の本筋とは外れてる部分だけど,なんかグサッときたよ.
いや,ちょっと待てよ.24歳の俺は「あー,ぽいぽい!今時のガキってこんな感じ」とか思うけど,実際の14歳からみたら全然リアルじゃないのかもしれんよね.つーか14歳を我がもの顔で語っていいのか俺は?そこまで若いか?でも大人側ではなく,主人公に感情移入できたから,まだ若いよね.きっと.それを喜んで良いのかを悩むけど.
僕が捨てた世界はろくでもないもんだと思っていたけど,薄皮一枚剥いで見たら世界は色鮮やかに広がっていて,ちょっぴり怖いけどもう一回生きてみるかっていうラストは清々しくてGood!さわやかな読後感で良い本だった!