自分を肯定するのが上手い

俺を俯瞰して見ているもう一人の俺、いわゆる幽波紋(近距離癒し型)が、
俺がどんなに失敗しようと怠けようと
すげー鮮やかにファンタスティックに斜め上から力強く肯定してくれる。
常識やルールやマナーや倫理や道徳すべてを飛び越えて。


例えば俺が
「今の出来では60点いくかいかないかの微妙なライン…
 だけどここをちょっとこうして治せば75点は固いな…
 …………えぇーい!めんどくせー!このまま、いっけぇぇぇーーーー!」
ってノリで報告書とか提出しちゃった後(実は例えてない)、
「あぁ、ほんの少しの努力すら出来ないなんて、俺はなんてダメなやつなんだろう」とモヤモヤし始めると、
俺の幽波紋
「まったくダメではありません!あなたは素晴らしい人です」
とフォローしてくれる。


いや、気休めはよしてくれ!俺は向上心のかけらもなく日々を無為に過ごす豚野郎なんだ!
「そんなことはありません。本当の貴方は素晴らしい人なのです」
本当の俺?
「そう、本当の貴方は向上心に溢れ、呼吸するように努力し、燦然と光り輝く存在なのです」
今の俺と全然違うじゃないか!
「中学時代、そのような存在である貴方を恐れた佐藤(趣味・黒魔術)が貴方に呪いをかけたのです」
な、なんだって!?佐藤が!?あの毎朝連続テレビ小説を見てから学校に来ていた佐藤が!?あの昼飯を食べ
「佐藤ではなく呪いの方に食いついてください」
くっ!すまないっ!やはり俺はダメなヤツだ!…一体どんな呪いなんだっ!?
「貴方が努力して成長して素晴らしい人間になればなるほど、
 貴方の周りの愛する人達に災いが降りかかるという恐ろしい呪いなのです」
なんだってー!?
「貴方は他人を不幸にするくらいなら自分の身を犠牲するような誇り高き精神の持ち主。
 故にこのような残酷な呪いが効果を発揮するのです…」
しかし俺はそんな事実まったく知らなかったのに怠けていた…やはり俺は元からダメなヤツなんだよ!
「いいえ、貴方のその黄金の精神が呪いを察知し、無意識の内にブレーキをかけていたのです」
……っ!!!!
「本当の貴方は努力がしたくてたまらないのでしょうが、どうかここは皆の幸せのために堪えてください」
くっ…なんて残酷な仕打ちっ!一つ教えてくれ。もし俺が頑張ったら具体的にどんな災いが?
「無意識にかけていたブレーキも貴方の溢れる向上心を押さえきれず、
 つい頑張ってしまったときがありました。2007年の夏の話です」
何を頑張ったのか覚えちゃいないが、誰に災いがっ?
柚木ティナ
俺のティナが!?一体どんな………はっ!!!!!
「そう。ティナがRioに…」
罪深い!なんて罪深い!あぁ運命の女神よ、何故俺にかくも残酷な業を背負わせる…!
ティナがRioなんかになってしまったのは俺のせいだったというのか…
すまなかった…ティナ…そして全国のティナファンたちよ…俺のせいで…俺のせいで…
「これでわかりましたか?貴方は皆の幸せのために努力することが許されない存在なのです…」
ぐっ…………しかたあるまいっ!(固く握り締めた拳。爪は掌にめり込み血が流れる)


みたいな感じ。


俺が怠けることで皆が幸せになるならしょうがないよね!
だからその報告書はその出来が限界なんだよっ!
お前の幸せのためなんだ!わかってくれ!
むしろ感謝して受け取れ!ファッキン上司!