高野秀行『幻獣ムベンベを追え』
- 作者: 高野秀行
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/01/17
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
★本屋のほんね
で,面白そうだったので買ってみた.
「こりゃ,おれたちが子供の頃あこがれていた怪獣探検そのものじゃないか」
「今だってあこがれているよ」
怪獣探しだってよ!怪獣!早稲田の学生が何頭の悪いこと言ってるんだ.ノンフィクション?うわっ本気だよこの人たち.面白すぎる.
アフリカのコンゴってとこに怪獣がいるらしいから探しに行こうぜって,でもコンゴって日本と国交ないし情報もないし,ビザとれんの?わかんねー!みたいな状態からこの物語は幕を開けるんだけど,この後の早稲田大学探検部の行動力がものすごい.怪獣ムベンベに関する文献(英語かフランス語)を読み漁り,電車でたまたま隣に座ったフランス人を捕まえてフランス語(コンゴの公用語)を教えてもらえるように頼みこみ,次はコンゴの共用語を覚えようとしたけど,テキストが日本にない!どうする?在日コンゴ人を探して教えてもらおう!とコンゴ人探しに行ったり,探検に必要な機材を揃えるためにメーカーに援助に頼んだり,ソニーの広報に蹴られたけど,ソニーの名誉会長に直訴して援助してもらったり,探検の許可をもらうためにコンゴ政府を説得したり,と何この凄まじい行動力.やろうとしてることは怪獣探しなのに!この人達すごいよ!頭良いけど頭悪いよ!
探検が始まりジャングルの奥地についてからも,何かにつけて事態を悪化させるトラブルメイカー,アニャーニャ博士(萌えキャラではない)や,「お金もっとくれないと村へ帰る」と足元を見てくるボア族のガイド,来て早々マラリアでダウンし,みんなから放置される田村さんなど面白すぎるキャラクターが活躍し(活躍?),次にどんな珍事件,珍騒動が起こるのか気になってどんどん読み進めてしまった.
秘境への探検や,部族との交流っていうのはテレビでも見るけれど,それとはまったく違う面白さを感じた.これは作り手の「キレイなイイ話にまとめて感動させよう」っていう飾り気がないだからだと思う.そしてそれがすごく良い.
部族の老人を「じじい」呼ばわりだし,出発の儀式を「滑稽」だと言い切るし,金をボラれそうになって冗談じゃないと怒るし,わがままなアニャーニャ博士にあんにゃろう!と悪態をつくし,テレビじゃ表現されないような生の部分が垣間見れて,こういうところがこの本の面白い部分なんだと思う.
どうしたら楽に,苦労せずにすむかということを考えてばかりいる俺にとっては衝撃的な探検記だった.「両手を広げれば空だって飛べるに決まっていた」小・中学生時代にこの本を読んでいれば,もうちっとばかし行動的な人間になれていたかも.
最後に.ゴリラって食えるんだ!