西尾維新『不気味で素朴な囲われた世界』

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)


 お,主人公が「いーちゃん」っぽいイカれキャラじゃん.壊れて歪んでるくせに自分は普通だと,取るに足らない存在だと思ってるのが性質が悪いよね.今作は西尾維新っぽくていいじゃない!『刀語』よりよっぽどいいね!


 言葉を発することなく表情だけで雄弁に語る病院坂,嘘しか言わないロリ先輩などリアリティゼロでぶっ飛んだキャラ設定は相変わらずで,マゾ体質の主人公との掛け合いも面白い.こうしてみるとやっぱ『刀語』は薄いな.薄い?なんか違うな.歪みっぷりとか壊れっぷりの負の要素が足りないのか.武術一筋で育てられた七花,父の仇を討つために身分を隠し幕府に仕えるとがめ,よくよく考えると西尾っぽくないありきたりなキャラ設定で普通の少年漫画っぽいぐらい真っ当じゃないか.西尾のくせに真っ当な物語だったのが気に入らなかったんだな俺は.理解した.ひねくれてる.


 あとがきで「病院坂黒猫がこっそり出演しているから探してね」的な事が書いてあったけど,あれのどこがこっそりなんだ?