小川一水『妙なる技の乙女たち』

妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち

小川一水の空想力に感服する。
一体どれほど宇宙に想いを馳せれば


宇宙で弁当箱の蓋を開けたらおかずが全部飛び散っちゃって大変だから
おかずの数だけ小窓をつけて、一箇所づつ開けられるようにしないと駄目だな


という考えが出てくるのだろう。


普通SFといわれたら
宇宙戦艦だのビーム兵器だのそういう物騒なものを思い浮かべるのだけれども
この本にはそんな危ないものはほとんど登場しない。
平和で優しいSF。
そんな感じ。
あと軽め。
軽一水。


この本の中で一番魅力的な着想かつ面白かったのが
食という観点から宇宙を見つめ、宇宙に農場を作ろうとする話
『the Lifestyles Of Human-beings At Space』
これだけで一冊書いてもらいたいぐらい。

「地元料理。地元料理のない土地なんて、ありますか。あるならそこは、まだ人の土地じゃないんですよ。旅人が訪れて去るだけの、かりそめの土地なんです」


全編通して宇宙事業の拡大にまつわる話を書いてきながら、
最後のこの話になって疑問を投げかける。


この宇宙事業は不自然ではないのか?と。
宇宙は本当に人の生活しうる場所になったのか?と。
答えは否。


ここにまた小川一水の空想力の凄さを見せ付けられ、
次に生態学、生物学的なアプローチによって問題を解決しようとする
取材力というか勉強量にまた感服する。


いやー、すごいよ小川一水
まぁ『復活の地』とか『第六大陸』の方が好きなんだけど。