野村美月『“文学少女”と死にたがりの道化』

野村美月
赤城山卓球場に歌声は響く』を読んだ時のことは今でも思い出せる。
なんてくだらないものを読ませてくれたんだと。
オレはこんなものに金を払ったのかと、
こんなものを読むために時間を消費してしまったのかと、
書いた作者と世に出した編集者と買ってしまった自分を呪った。


そして生まれて初めて本を投げつけようとした。
…したんだけど、投げる先がふすまだったから破れたら困るなと思いとどまり、
じゃあ下に叩きつけてやろうと思ったけど今度は本がかわいそうな気持ちになって、
結局のところ、投げつけはしないけど手を離してペシッと床に本を落とすという制裁で溜飲を下げた。


今思うと何をそんなに気に入らなかったのかわからない。
ただつまらないだけなら珍しくも無いのに。
怒りへと昇華させるほどのエネルギーをもったつまらなさだったのかもしれない。
まぁ、そんなこんなでもう二度とこいつの書いた本なんて読まないと思っていたのに
色んな書評サイトで『文学少女』面白いって書かれてるから気が気でない。


うそだろ?だって赤城山〜〜書いてた奴だぜ?


んで
面白いんじゃなくて、ただ読書好きな主人公が好きなだけだろ?
っていうのを確認するためという非常に後ろ向きな理由で読んでみたんだけど、


まぁ、つまらなくはなかった。
米澤穂信みたい。
太宰治の導入書か二次創作としてみればそれなりに面白い…か。


でもまぁ、みんな本当は純粋にシナリオを楽しんでるわけじゃなくて
作中で文学少女が挙げる様々な本を
「あー、私も読んだ読んだ。あの本は面白かった」とかいって
自分がいかに読書家であるかを確認してニヤニヤしてるんでしょ?きっと。
言われてるほどは面白くない。
それを確認して安心した。
よかったよかった。