『サンキュー・スモーキング』


タバコ研究アカデミーのPRマンをするニック・ネイラーは、厳しさを増すタバコへの攻撃をかわすため連日マスコミの矢面に立って戦い続ける業界の顔。中でも、パッケージにドクロマークを、と息巻くフィニスター上院議員は目下最大の懸案事項。そんなある日、ニックは映画を使ってタバコのイメージアップを図る“スモーキング・ハリウッド作戦”の指揮を任される。一人息子のジョーイを連れ、ロサンジェルスへと渡ったニックは、さっそくハリウッドの大物エージェントと面会、タバコPRのための映画の企画を話し合う……。


 Shamrock's Cafeさんで紹介されてて、面白そうだったのでレンタルしてきた。


 主人公ニック・ネイラーが巧みな話術で論点をすり替え、印象を操作し相手をやり込めていく様は非常に痛快で面白い。


 この映画ではPRマンとしてのニック・ネイラーと一児のパパとしてのニック・ネイラーが描かれているのだけれど、議論の才能を無駄遣いするパパとしてのニック・ネイラーが非常に魅力的。息子の授業で自分の仕事を紹介したパパ。そこでタバコは健康に良くないと言った女の子に対して「誰がそう言ったの?」「ママか。ママはお医者さん?」「研究者?違う?専門家じゃないわけだね?」「他人の言ったことを鵜呑みにするのはやめよう。チョコが有害だって言われたら君たちは信じるかい?」と議論のテクニックを遺憾なく発揮し、子供たちの印象を操作する大人げなさに爆笑。すごい良いこと言ってるんだけど、それをコミカルに魅せてくれるので面白い。息子に出された作文のテーマについて議論という点からダメ出しするシーンも(この作文のテーマも笑える)大人げなくてとても良いし、「宿題早く終わったら夜更かししていいか」と聞く息子に対し「それは議論じゃなくて交渉だ」とばっさり切り捨てるとこも笑える。プロだよこの人。そんなパパの背中を見て、着実にロビイストとしての才能を開花させていく息子にも、おいおいあんな親父に似ちゃってきてるじゃんという笑いがこみ上げてくる。


 演出に関しては、もう少し大味だと個人的に良かったかも。あんまり深く考えないで映画を見ている俺にとっては、公聴会のシーンのラストで「え?これで終わり?勝ったのこれ?やりこめた?」という印象を受けた*1。やり込めたのなら、ニックの仲間が「イヤッハー!!」とか叫びながらハイタッチしてほしいし、フィニスターは「くそっ」と吐き捨て、机叩いて椅子蹴っ飛ばして会場から出て行ってほしい*2


 結論。面白い映画だった。監督はジェイソン・ライトマン。主演はアーロン・エッカート。覚えておこう。

*1:二回目見て気づいたけど、買った負けたとかいう次元の話じゃなくてもっとイイ話だったのねこれ

*2:書いてて自分でも思うけど、そういうノリの映画じゃない