『秒速5センチメートル』


 貴樹が何をしたいのかわからない。


 明里の影を追い求めるが、結ばれることはないっていう切ないシチュを新海は描きたい。しかし貴樹がしっかりと問題を認識して、問題解決を図っちゃうとシチュぶち壊しになってしまう。ここらへんの、問題解決しようともがくけど、それでも結ばれないっていうシナリオを巧く書くほどの力がないから、貴樹がよくわかんない人間にならざるをえない。ここが残念。シナリオの弱さは相変わらず。


 しかし、この映画は雰囲気を楽しむ映画だから、そこらへんはあんまり気にしてはいけないところなのかもしれない。新海の描く情景はシナリオの弱さを補うほどの表現力があると思うし。


 新海は脆くて切ないものに美しさを見出す人間のような気がする。もしかして乙一(白い方)を原作にして映像化すればすごいものができるんじゃないだろうか?なんかすごい見たいぞ。新海が作る「しあわせは子猫のかたち」とか。